最近少しだけハマっていた暗い趣味の話。
それは、
「大学を出て家に到着するまでの環境音を全て録音して、家で聞く」
というものだ。
きっかけは、iPhoneに録音アプリがあることを知り、それを試したことだった。
会話の内容はもちろん、講義の音声も録音できるほどの精度を持ったものだ。
で、僕は出来心で、帰宅途中の街の音を録音してみた。思いのほか鮮明に録音されていて、電車内の会話まで微かに聞き取れた。*1
それを通して聞いてみると、面白いことに、歩行中の環境音から、大体どの辺りの道を歩いているのかが分かるのだ。
例えば、信号の音とか、店の呼び込みとか、地面の材質などで、大体の位置が推測できる。それが面白い。
修論を書いている時期、僕は家で黙々と作業することが多かった。
特に、エクセルへの打ち込みのような、単調作業も結構あった。
そんな時に、録音した「帰宅時の環境音」を聞く。
すると不思議なことに、「家にいる」という感覚よりも「帰宅している」という感覚のほうが強くなってくるのだ。
つまり、パソコンの画面や部屋の空調等といった情報よりも、環境音のほうが"位置情報の自意識"に強く影響を及ぼしているということになる。
家で作業をしながら、僕は道を歩いている感覚を味わう。
交差点を渡り、信号待ちをして、電車を待ち、各駅停車の電車に揺られる。
そして最寄り駅を降り、とぼとぼと夜道を歩いて、がちゃりと玄関を開け、階段を登り、自室のドアを開ける……。
振り向くと、背後に誰かが立っているような気持ちになる。
*1:一見犯罪的だが、調べてみたら犯罪ではない模様。いやはや。