◾️演劇『自己紹介読本』
(城山羊の会)
2018年4月17日
駅前の噴水前で待ち合わせをする人々が、意味もなく話を始め、意味もなく相手の人生に干渉し……というブラックコメディ。
笑えるけど本当に気まずい。
恋愛、結婚、妊娠、中絶、精神病の全てを茶化しながら「なんで見ず知らずのアンタにそんなこと言われなきゃいけないの?」という気まずさだけで90分もたせたお話。
人間社会ががいかに無意味か、表層的かを見せつけられる恐ろしい演劇。
観ててイライラしながらも、何度か声出して笑ってしまった。人間がいかに下品で、自己中心的で、野次馬根性と性欲に溢れているかよく分かる。人間社会がとても無意味で、表層的であるかのように思わされる。まあ実際には、この演劇が表層的な(面を殊更強調している)だけなのだろうが。
僕はこの劇団が好きで何度か観に行ってるのだが、毎回かなり似通っていて、「性欲と下世話な好奇心だけの本性が曝け出されていく」というテーマになっている。
もちろんそれを成立させるだけの演出と演技は素晴らしいものだ、という前提はあるにして、
はたしてこれらの物語はどれだけ現実的か?(現在を表しているか?)と考えてみる。
そう冷静に考えると、やはり非現実的で、人間のある一部分だけをむやみに拡大しているような歪さを感じる。
これはもちろん、「愛こそ全て」というような、人間の明るい面だけを拡大したありきたりな物語群へのカウンターなのだろうが、それにしては演劇として完成されすぎていて説得力が強いのが恐ろしい。
とはいえ、上記のような「ありきたりな物語」がそれほど今や世界に蔓延っているとは思えないし、そういう意味では今このカウンターをやること自体にあまり意味はなく、単なる露悪趣味として(これが事実の部分拡大だと大いに理解した上で)観るべきなのだろうか。
だとすれば、かなりの精神強者向けの物語ということになる。
僕は、その間の中途半端な位置から観ることしかできなかった。
何にせよ演出・演技力を楽しむためだけにでもお金と時間を使う価値があるので、また次回も見ることにする。