去年の11月24日、僕はクリスマスイブの新幹線の座席を予約した。
ご存知の方も多いと思うが、新幹線の座席は、乗車予定日の一ヶ月前から予約可能になる。
僕がクリスマスに恋人に会いに行く予定があったから、どうしても座席が取りたくて,予約開始日の11月24日にすぐ予約をした。
無事に座席がとれた僕は、一仕事終えたような気持ちで駅から外へ出た。
確かもう午後6時ごろで、外は暗かった。
僕は大学へ戻ろうと歩みを進めた。
が、その途中で僕は違和を感じた。
見慣れたはずの町並みが、どこかおかしいような気がする。
不審に思い視線を上げると、その原因はすぐに分かった。
街灯や木々に、クリスマス風の装飾がなされているのだ。
昨日まではなかったそれが、突然施されていたことが違和の正体らしかった。
今まで、装飾がいつ始まるかなんて気にしたことはなかったが、こんな11月のうちから施されているんだな……と想うだけで、さして興味も持たず僕は視線を地面に戻した。
が、次の瞬間、ふと「なぜ今日装飾が始まったのか」を理解した。
それは、11月24日だからだ。
地方自治体の取り決めで、「クリスマスの装飾はきっかり一ヶ月行う」と決められているのだ。
そして、ずっと前から自治体のカレンダーには『11月24日:装飾開始』に印が付いているのだ。
それは、僕が自分のカレンダーに『11月24日:新幹線の予約開始』と書いたのとまったく同一の現象である。
そしてそれはおそらく、自治体やJRだけでなく、おもちゃ屋さんも、ケーキ屋さんも、デパートも、各メディアも同様だろう。
管理されたスケジュールの上で、クリスマス進行を徐々に始めているのだ。
それに気付いた時、なんだか僕は少し寂しい気持ちになった。
クリスマスのうきうきする気持ちは、「何となく徐々に押し寄せてくるもの」ではなかった。
あの楽しげな気持ちは、管理されたスケジュールに則って供給されているものなのだ。
それはもちろんクリスマスだけの話ではなく、正月も、お祭りも、紅葉狩りや花見なんかの楽しさも、誰かに供給・管理されている部分が大きいのだ。
それをポジティブに捉えるかネガティブに捉えるかは個人に依るところだろう。
だが僕は、それに気づいてから「生かされている」感じがして、なんだか得体のしれない不快感を覚えた。
今年もクリスマス進行が始まっている。
スケジュール通りである。
皆さんは、各団体のスケジュール通り、うきうきしてきただろうか。