kenpi20の灰色マインドマップ日記

都内で暮らす会社員のライフログ、現状把握、自己分析

【工学】 TOTOの『エアインシャワー』開発に見る、工学的思考プロセス

 

今日は忙しいので手短に。

久しぶりに工学の話をしよう。

 


今日の話は、トイレで有名な『株式会社TOTO』の新製品、「エアインシャワー」と、その開発プロセスについてだ。

これが非常に論理的で素晴らしかったので紹介したい。

 

 

 

 

まず最初に、「エアインシャワー」とは、風呂場で使う家庭用シャワーの新製品である。

エコの観点から、従来より35%の節水を実現しつつ、浴び心地は今まで通りという不思議な商品だ。

 

その秘密は、「エアインシャワー」から出る水の粒にある。

使用中は気づかないが、実は「エアインシャワー」の水の粒の中には、空気(気泡)が入っているのだ。

それによって、今までと同じように水が出ているように感じても、その気泡の分だけ節水ができている、という仕組みである。

 

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この技術を開発するに至ったプロセスが、非常に工学的で素晴らしい。

 

 

まず、プロジェクトチームは上層部にこのような要請をされた。

 

「使用する水の量を減らしつつ、浴び心地は従来通りというシャワーを開発しなさい」

 

この難題に対し、プロジェクトチームが最初に行ったことは、

「"浴び心地"という評価手法の定量化」

だった。

つまり、"浴び心地"というつかみ所のない物を、分かり易い形で言い換える(数字で表す)ことが出来るかを考えたのだ。

 

 

実験の結果、まず彼らがたどり着いたのは、

 

"浴び心地"= 一秒間に体に当たる水の量

 

という法則だ。多くの水が体に当たれば、浴び心地が良いという結果が出た。

これを言い換えると、こういうことになる。

 

"浴び心地"= 一秒間に水が当たる表面積の大きさ

 

つまり、体の広い部位に水に当たればいい。

シャワーの立場になって考えると、

 

"浴び心地"= (一秒間に出る粒の数)×(1粒の表面積)

 

となる。


ここで、前提となる「使用する水の量を減らす」という目標を思い出そう。

「水の量」とは何だろうか。これを式に表してみると、

 

"水の量"= (一秒間に出る粒の数)×(1粒の水の体積)

 

ということになる。

 

さて、ここで2つの式に違いがあることに気付いただろうか。

 

そう、"浴び心地"は粒の「表面積」で決まるが、"水の量"は粒の「水の体積」で決まるのだ。

 


この調査結果を基に、上層部に言われた課題である「水の量を減らし、浴び心地は従来通り」を言い換えると

 

「水の粒において、水の体積を減らし、粒の表面積は従来どおり」

 

ということになるのだ。

 

 

ここまで来て、プロジェクトチームは思いついた。

 

「従来どおりの表面積を実現するために、水の中に空気の泡を入れよう。
これなら、水の体積は少なくて済む」

 

こうしてエアインシャワーは完成した。

 

 

 

この開発プロセスで素晴らしい点は、最後の、「思いついた」というではない。

最初の、"浴び心地"を数字で表そうとした点だ。

 

このような、問題を分かりやすく数字に落としこむことで、問題点を分かりやすく表在化させるという手法。

これがまさに工学の第一歩だと言える。

 

良い発想は、突然は生まれない。

着実な理論の上で成り立つのだ。