「障害者」を「障がい者」と呼ぶべきか?
という問題が、数年前によく話題になっていたように思う。
主な意見をまとめると、以下のようになる。
【賛成派】「障害者」の"害"という字にはネガティブなイメージがあるため、「障がい者」と呼ぶべきだ
【反対派】それは過剰に反応しすぎで、意味はない。むしろ"言葉狩り"の範疇であり、有害だ。
どちらが正しいのだろうか?
それは分からないが、今回は医学・福祉工学分野での現状を述べよう。
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この問題について、医学・福祉工学の学会ではどのように対処しているのだろうか。
まず前提として、学会や学術論文において、「障害者(障がい者)」という言葉はあまり登場しない。
というのは、学術においては、「障害者(障がい者)」を一括りにすることは少なく、
「上肢切断者」「片麻痺患者」「振戦患者」「認知症患者」というように、生物学的な状況に応じた表記がなされるのだ。
だから、「障害者(障がい者)」という言葉を使用したり、議論する機会は、医学・福祉工学の学会においては少ないと言える。
それでも、たまに使用されることはある。
その場合、2014年現在において、「障害者」という表記のほうが圧倒的に多い。
※参考:国内論文検索サイトCiNiiの検索結果(あくまで参考)
http://ci.nii.ac.jp/search?q=%E9%9A%9C%E5%AE%B3%E8%80%85&range=0&count=20&sortorder=1&type=0
http://ci.nii.ac.jp/search?q=%E9%9A%9C%E3%81%8C%E3%81%84%E8%80%85&range=0&count=20&sortorder=1&type=0
以上のことから、
「医学・福祉工学の学術分野においては、この表記方法の議論が、そもそもあまり注目されていない。そのため,用いる場合には従来の障害者という表記が優勢」
ということが言えるかと思う。
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※障害者(障がい者)という言葉が最も多用されるのは、おそらく法や国に関わる団体・文書(自治体など)であろう。
そちらの分野に関わる人においては、おそらく大問題なのだろうなという予測はつく。
しかしそれは僕の専門外であるので、無理して言及することは避けよう。
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では最後に蛇足ではあるが、僕自身の意見を述べておく。
僕としては、統一する必要はあまり無くて、
個人としては「障がい者」を用いていきたいと思っている。
統一する必要が感じられないと思うのは、どちらの表記であっても強く当事者を護る(or傷つける)要因にはならないと思うし、また、悪質な言葉狩りにも該当しないと思うからだ。
(実際に当事者たちがどう思っているのかは知らない)
そして「障がい者」を用いる理由としては、
"この表記によって当事者が嫌な思いをしなくなる可能性"が、"この表記が過度な言葉狩りに当たり、今後害をなす可能性"よりも、少し高いと感じるからだ。
もちろんこれには根拠はなく、単なる思い込み(主観)にすぎない。
しかしこの件は、当事者全員にアンケートでもしない限り、思いこみで判断するしかない。
僕はこう判断している。それだけのことである。
僕が言い切れるのは、
「僕は、当事者の方たちが、少しでも嫌な思いをしなくなればいいな、と考えている」
ということだけである。
これが、無責任な個人の意見の限界だ。