【ジャンル】 随筆(エッセイ)
【初版発行】1972年
【読了時】2015年
【レビュー執筆時】2015年
■この本を読んだ理由
本屋さんで見かけて。
最近観た、寺山修司原作の演劇が面白かったので。
■概要
戯曲家、寺山修司が若者を啓蒙する内容の随筆(エッセイ)。
親を捨てて家を出なさい。公序良俗に反する行為を行いなさい。その他、色々なすすめ。
■感想
凄まじい熱量を持ったエッセイだった。
最初の提言が
『Beat, Beat, Beat! 他人の母親を盗みなさい。』
である。
脳みそがとろけそうだ。
その後もこうした常識からかけ離れたメッセージが散見するが、それらの意見の根拠は、たいがいが詩である。
要するに論理的な根拠なんて無い。しかし奇妙なのが、作者はそのことを誤魔化していないし、恥じてもいない。「論理的ではない。それがどうした?」とでも言いたげな、圧倒的な勢い。男らしい。
大筋としては、「家を、親を捨てろ。まず捨ててから人生の目的を考えろ」「反俗的になれ。常識を捨てろ」といった所だろうか。
こうした力強いメッセージを表しておきながら、それに関する作者の自伝的部分は非常にセンシティブだ。まさに詩人なのである。
よく巷では「詩」や「ポエム」を、「よく分からない難解で痛々しいもの」という偏見で見ることがあるが、寺山修司に限って言えばその偏見は間違っていない。そして彼の提言はそんな世間の(阿呆どもの)意見など突っぱねるだけの強さがある。
要は、それが重要なのではないか。親や周囲、世間の目など気にするな。好きな様に生きろ。そういうことを伝えるために、わざわざ内容というよりも文脈(および文体)という形で強さを見せているのではないか。
何にせよ、この脳みそが破壊されるような感覚は、寺山修司以外の文章ではちょっと味わえない。
読んでみてほしい。俗世に依存しな感性というものがどういう物か、分かるはずだ。
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最後にこっそり、ほんの少しだけ、本音も書いておこう。
凄い本だと思う。でも、今の僕にはまだ少し難しかったです。本音おわり。