ブログ風タイトル。
久しぶりに暗くない話で、昨日の午後8時頃の話なのだが。
僕は大学の図書館に本を返す用事があって、大学の敷地内を歩いていた。
図書館は少し奥まったところにあり、夜だったこともあり人通りは少なかった。
図書館に近づいていくと、建物の前に二人の人影が見えた。
二人とも研究室の先輩だった。男の先輩と女の先輩だった。
先輩たちは何か口論をしているようだった。
何というか、非常に感情的な顔をしていて、研究の話をしているようには見えなかった。
まずいことになったな、と思った。
彼らがどんな関係で、どんな話をしているのかは分からない。
ただ、こんな人通りの少ない所で話し込んでいる時点で、少なくとも知り合いには見られたくない一面ではあることだけは分かった。
僕は最初、彼らに気付かないふりをして図書館に入ろうかと思った。
が、それは彼らの位置関係上、不可能だった。
これ以上近づいたら、僕が彼らに気付かないふりをするのは不自然すぎるし、
彼らが僕に気付かないふりをするのも不自然すぎた。
黙って会釈をして通り過ぎるのも、何だか気を使っているような印象を与えてしまう。
そもそも、僕の存在に気づいた彼らに「あっ、見られた、まずい」という顔をされるのが非常に嫌だった。
困った僕は、ある方法を選択した。
かなり距離がある段階で、こちらから彼らに声をかけたのだ。
「あ、○○さーん、失礼しまーす!」
あえておどけた調子で声をかけた。
彼らは一瞬ぎょっとしてこちらを見た。
彼らは何かの感情を抱く前に、間髪入れずに僕は二言目を発した。
「いやー、図書館まだ開いてて助かりました! ちょっと横失礼しまーす!」
僕が続けておどけた声でそう言うと、先輩たちは、ほっとしたように笑って、
「お疲れさまー」
と言った。
勝った、と思った。
僕の台詞は完璧だった。
彼らが何かを考える前に、
「自分が図書館に用事があること」
「横を通りたいだけであること」
「彼らの行為に何の感想も抱いていないこと」
を完璧に伝えきった。
僕は完璧に、ただ居合わせただけの、無害な後輩だった。
僕は万能感に陶酔し、しかしそれを一切顔に出さず*1、その場を後にした。
*1:ここが重要。