科学において、世界の現象を解明していくと、いくつかの基本的な物理法則に基づいていることが分かってくる。
例えば「月はなぜ地球の周りを回るのか」「雷はなぜ発生するのか」といった自然現象は、
「万有引力」「ローレンツ力(フレミング左手の法則のアレ)」「運動方程式」といった、より根本的な法則によって説明がなされる。
そして科学者(工学者)は、この根本的な法則に基づいて物を作ってきた。
自動車、冷蔵庫、電子レンジ、その他もろもろ……これらは法則に基づいて機能している。
しかし、ここで一つ問題がある。
「万有引力」「ローレンツ力」「運動方程式」といった根本的な法則は、なぜ成り立つのか、その原理の証明はまだ出来ていないのだ。
万有引力がなぜ生じるのか、現在でもまだ解明されていない。
仮説としては「最小作用の原理に基づく」とか「ヒッグス粒子が関係している」などの説があるが、解明はなされていない。
そして、もしその関係性が証明されたとしても、「最小作用の原理はなぜ成り立つのか」や「ヒッグス粒子により物質が質量をもつ現象はなぜ成り立つのか」の解明が必要となる。
つまり、物理学において、「どうしてこうなるのか?」の最終的な答えは存在しない。
「世界とはそういうものなのだ」としか言い様がない。
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念のため言っておくが、このことから「科学は正しくない」という結論は導き出せない。
何故なら、上記の法則の正しさは、実験によって証明されているからだ。
※「実験による証明」とは、一回実験をやって上手くいった、というレベルの話ではない。十分な回数の検証を行い、統計学的に偶然ではありえない(有意に差がある)ということが証明された状態のことである。
ここで言っているのは、「この法則の正しさを証明できない」という事ではなく、「この法則がなぜ成り立つのかを説明できない」ということである。
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さて、僕が今日ここで話題にしたいのは、「原理がわからないことを基にモノを作っていること」に対する興味深さだ。
分かりやすい例を挙げると、音楽がそうだ。
我々は音楽によって気分が良くなったり悪くなったりする。これは実験に基づいた事実だ。
しかしその原理は不明のままである。
それなのに、人間は日々音楽を作り、その恩恵を受けている。
これと同じように、冷蔵庫も、電子レンジも、厳密な意味ではなぜ機能するのか分かっていない。
(※風説である「飛行機が飛ぶ原理は未だに分かっていない」という話については……また今度書こう。一般的な意味では、飛行機が飛ぶ原理は、クッタ・ジュコーフスキーの定理で説明される)
人々は、究極的なところでは「世界とはそういうものだ」と納得して生きているのだ。
それは何だか恐ろしいことのように思えるが、どうだろうか。
頭がくらくらしてきた。
たぶん後日、続きなり修正なりを書きます。