kenpi20の灰色マインドマップ日記

にわか作家志望(某メーカー研究職、新入社員)による、現状把握・思考整理

【エッセイ】 山菜そばと唐揚げ丼(大盛り)


どうにも作業する気が出ないので、今日は抱腹絶倒の面白エッセイです。



去年の夏の話。
僕は研究室の合宿に参加することになった。

うちの研究室の合宿は、単にスポーツ等をして飲み会を開いて、日頃の疲れを癒やすための企画だ。

僕は例年参加していなかったのだけど、先輩との兼ね合い等が色々とあって、今年は嫌々ながら参加することにした。

話は、その初日の昼食である。
行きはバス移動だったが、軽井沢の合宿地までそこそこ距離があったので、僕らは途中のサービスエリアで昼食を取ることになった。


さて、何を食べよう?
列に並びながら僕は考えた。

バス移動はここから先も結構長い。あまり脂っこいものを食べると、途中で気分が悪くなるかもしれない。
それに、着いた先でサッカーやテニスをすることになるだろう。それを考えると、あまり重いものを食べない方がいいだろう。

そういうリスクを考えて、僕はサッと食べられる「山菜そば」を注文した。


空いてる席を見つけ、トレイを机に置いた時、背後から「おーい、そっち開いてるか?」と声がした。

声の主は、同期の友人Kだった。
Kは大柄ではないがスポーツマンで、豪快に笑う、感じの良い青年だ。

Kはニコニコしながら、僕の隣にドンをトレイを置いた。
トレイの上に載っていたのは、大盛りの唐揚げ丼だった。

「いやー、俺ハラ減っちまってさ」

そう言いながら、彼はわしわしと、美味しそうに唐揚げ丼(大盛り)を食べ始めた。

その光景を見て、僕は気づいてしまった。

僕は一生、彼には勝てない。
食事の話だけではない。スポーツも、研究発表も、人生の全てにおいて、彼には勝てないと確信した。


何故なら、彼の中にリスクなんて言葉はないからだ。好きなものを、好きなときに、好きなだけ食べる。
楽しむことに、迷いがない。
後悔もない。

彼は、彼の人生を生きている。

そういう人間を前にして、僕に何が出来るというのだろう?

僕は眼前の山菜そばを見た。
別に僕は、山菜そばが好きな訳ではなかった。
なんだかそこに、僕の人生の、僕という人間の、本質を見てしまったような気がした。




その後、僕は山菜そばを食べ、バスに揺られ、適当にスポーツをし、適当にコミュニケーションをして、帰路についた。
その間、僕は特に問題を起こさなかった。
笑顔を作れたし、初対面の人とも仲良くやれた。
我ながらそつなくこなしたと思う。

でも、楽しくはなかった。


僕に隣には、ずっと友人Kが居た。
彼は常に楽しそうだった。
サッカーの試合で空振りをして転んでも、夜に飲み過ぎて倒れても、それで先輩に怒られても、いつでも楽しそうだった。

僕は彼がとても羨ましかった。

だけど、僕には、唐揚げ丼(大盛り)を頼む勇気は、やっぱり無い。
次に参加する機会があっても、やはり僕は山菜そばを頼むだろう。

それが僕の限界だ。
そのことを、僕ははっきりと自覚させられた。