そういう訳で、7月いっぱいでバイトを辞める旨を報告した。
直接の原因は今日バイト先であったことで、その内容をここに書く。
まず、僕のバイト先は個人経営のレストランの厨房である。
今日は僕と社員(一人しか居ない)の二人でお店をまわしていた。
その途中で、社員が僕に相談を持ちかけてきた。
「機材を購入する関係で、某所(電車で30分ほど)まで行ってきて欲しい。ただ、この件はオーナー(社長)には黙っていてほしい」
との事だった。
僕は、なんだか面倒な用事だなと思ったが、承諾した。
そして、もうすぐ行こうかという所でオーナーが来店した。
その後、色々あって、オーナーに全てが露呈した。
社員はしこたま怒られた。
僕は「社員に言われただけだから」という理由で怒られなかった。
だが、僕はそういった環境にうんざりして、また引き受けてしまったことに対する多少の罪悪感もあり、「もうここには居られないので辞めます」と言った。
社員、オーナーともに引き止めてくれたが、
「二人の上司から矛盾された指示を出されるような職場には、僕は居たくない」
と言って、あと一ヶ月で辞めることを決めた。
バイトをしなければ生活が出来ないという身でもないし、さくっと辞めることを決めた。
本当は次のバイトを見つけてから辞めたかったが、まあ、いい機会だったと思う。
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ここからは、それに関する余談。
僕はふと、映画『2001年 宇宙の旅』を思い出した。
この古典SF映画には、HAL9000という人工知能(コンピュータ)が登場する。
彼は、
「宇宙船の乗組員(人間)たちと協力して、木星まで探索に行け」
という命令を受けていた。
しかし同時に、裏では極秘のミッションを課されており、
「裏のミッションについては乗組員たちには話すな」
と命令されていた。
二つの矛盾した命令に耐え切れなくなった彼は、徐々に異常をきたす。
そして、「乗組員たちが居なくなれば会話をすることもなくなる」と考え、乗組員の皆殺しを画策する。
今日、バイト先で僕は思った。
僕は、矛盾した命令を受けたHAL9000だ。
そんな下らないことを思い一人で笑った。
誰かに話したかったが、それを話しても分かってくれる人がバイト先にいないようだったので、黙っておいた。