kenpi20の灰色マインドマップ日記

都内で暮らす会社員のライフログ、現状把握、自己分析

【日記】土砂降りの下で寝ていれば死ねるのではないかと思った

<今回のまとめ>

 自分のしていることと考えていることがよく分からない。

 

 

 帰り際に土砂降りの雨が降ってきた。かなり強く、軟弱な傘だったら壊れてしまうくらいの雨。僕は常備している折りたたみ傘で必死に家な思いで帰った。鞄は防水になっているので問題なかったが、ズボンはずぶ濡れになってしまう。なんとか家に帰った僕は、濡れた服を脱ごうとして、ふと窓の外を見た。そして、この雨の中を傘もささずに突っ立ってみたら面白いんじゃないかと思いついた。そこで濡れても良い服に着替え、傘を持たず外に出てみた。

 ドアを開けた途端にドガァァァァと容赦の無い音が襲ってくる。ちょっと面食らいながらも、でも雨だからって外に出ないのも馬鹿らしいなと思って、えいやっと外に出た。だだだだだ、と脳天に雨粒が落ちてくる。つい手で雨を防ごうとするが、それじゃ意味がないと思い、棒立ちしてみる。すると思っていたよくかなり気持が良い。冷たい水を浴びていることが単純に気持よかったし、粗雑な扱いをされている感覚も心地よかった。上を向いてみると無慈悲に顔に水滴が落ちる。呼吸が出来ない。口を開けてみたが漫画みたいに水は溜まらなかった。でも口内に冷たい水と空気が入るのは心地いい。そう思いしばらく深呼吸とかしていて、ふと気付いた。服が思ったほど濡れていない。風があまりないので、突っ立っていたら真上からの水しか受けず、側面部が濡れにくいのだ(もちろん濡れてはいるが、びしょびしょではない)。では歩いていたら濡れるのだろうか。そう思い公園のほうまで行ってみることにした。

 一歩踏み出すと、また世界が変わった。ざあっと、一気に体の前面が濡れる。気持ちいい。気分が高揚した僕は走りだす。シャワーの栓を限界まで回したかのように全身に水がかかる。服が水を吸って急に重くなった。しかし速度は緩めず、呼吸が荒くなるとまた肺に冷たい空気が入ってくる。楽しい。これは楽しい。

 そうしてしばらく走っていると、当たり前ではあるが疲れてきた。運動した後のダルさというよりは、暑い部屋にずっと居た時のような、芯からズンとくる重いダルさだ。走るのが面倒になった僕は、前後に誰も居なそうなので、その場に寝っ転がることにした。

 地べたに寝っ転がるのはもちろん初めてだったし、その「いけないこと」な感じが面白かったのかもしれない。まず最初は、壁にもたれ掛かって休んだ。道路脇は水溜まりになっていて、お尻がぐっしょり濡れて笑えた。お尻がずんと冷たかった。で、やっぱり道路で大の字が一番楽しいだろうと思って、道路の真ん中で大の字になった。瞬間、足から頭まで全身に向かってダダダダダと雨粒が襲ってきて、予想以上の衝撃に驚いた。この衝撃は本当に物凄くて、全身の力を抜くと、もはや自分が生物であることを忘れそうになった。

 そのまま目を瞑り、しばらくぼうとしていた。衝撃には慣れてきて、単調な音の中で聴覚が麻痺しているかのような感覚に陥る。そして体温がどんどんと下がっているのを感じる。このまま寝ていれば死ねるのかな、と思うが、そこまで寒くないし、その前に車か何かが来て助けられてしまうだろうな、と思った。

 そして僕は立ち上がるタイミングを失った。立ち上がる意味がないのだ。このままこうしていれば気持ちいいまま意識を失えるかもしれないし、立って帰ったところで風呂に入って体を拭いて夕飯を食べて作業して寝るだけだ。あまり意味がない人生だ。それならずっとこうしていたほうが、何も考えないでいたほうが良いのではないか。そうだ、そうしよう。こうしていれば何も辛いことはない。このままずっといつまでもこうしていれば良い。この時僕は本当に久しぶりに、自分の中の純粋な欲求というものを感じた。

 

 で、しばらくして、僕は体を持ち上げて帰路についた。そこで起き上がった理由は自分でもよく分からない。そもそも毎日なぜ生きているのか分かっていない僕にとって、今回の行動の理由なんて分かるはずがなかった。だから起き上がった理由もよく分からなくて当然だった。サッカー選手は、皆の前で堂々と雨の中で走り回れるから良いなと思った。

 

 帰宅した僕はタオルで体を拭き、熱いシャワーを浴び(やはり相当体が冷えていた)、カップスープを飲んだ。体が本格的に疲れているな、と思いながら、椅子の上で力を抜き、ベッドの上に投げ出されているきらら系4コマ(○本の住人)をパラパラめくった。そしてスタンバイ状態になっていたPCを起動して、tweenをつらつらと斜め読みした。

 いつも通りの夕方だった。いつもの生活の中で、ふと先ほどのことを思い出してみると、何故あんな事をしたのか、全然分からなかった。

 考える内に、なんだか物凄く異常な行為をした気がした。雨の中でふらついただけでなく路上で寝っ転がっていたのだ。僕は頭がおかしいのではないか。友人がそんなことをしていたら病院を勧める。病院とまではいかなくても確実にその人と距離を取るだろう。僕だってそんな人は嫌だ。もし恋人がそんなことをしていたら別れるかもしれないし、家族がそんなことをしていたら家族会議ものだろう。

 先程、僕はなぜあんなことをしたのだろう。思い出せない。分からない。もう二度とあんなことはしないだろうと思う。先程までの自分の思考がどうしても辿れない。本当に頭がおかしいのかもしれない、と思ったが、おかしいと認識している時点でおかしくはないのかもしれない。分からない。先ほどまでの景色が、感覚が、夢の中の出来事のように現実感を伴わずに思い出される。もしくはただの妄想だったのだろうか。本当に妄想だったのかもしれない、と思うが、体のダルさが残っているので現実だったようだ。なんだかよく分からない。いつの日か、なんだかよく分からないままよく分からないことをして死ぬのではないかと思った。そんな人間が真面目な顔して大学に行ったり何でもないような顔して世間話をしているのだからたまらない。認めたくない。雨の中で大の字になっているような人間は、死ぬまでずっと大の字になっているべきなのだ。帰ってきてはならないのだ。僕は強くそう思った。

 もう自分が何を考えてるのかも何をしているのかもよく分からない。不安定で気持ちが悪い。頭がぐらぐらする。もう終わりにしたい。『さよならもいわずに』の台詞で「誰かが俺を狙撃してくれないもんだろうか」というものがあったが、まさにその気分だ。ぐるぐるぐらぐらしている僕の中の何かを、そろそろ誰かに止めてほしいものである。